;多種類化学物質過 敏症)-国際会議、東京
10月3日・4日 JICA(国際協力機構)-研究機関
多種類化学物質過敏 症(MCS;Multiple Chemical Sensitivity)の治療
<ヘパートックス療 法>天然キレート剤(例;グルタチオン)、ミネラル類、ビタミン類を用いる個別解毒プログラム
クラウス・デート リッヒ・ルノー医学博士
機能・環境医療研究 所(IFU)
ヴォルフハーゲン― ドイツ
www.umweltmedizin.org
1,多種類化学物質 過敏症(MCS)とは何か?
MCS患者は、一般 に広く使用される多種類の有毒化学物質に、極微量な量でも反応する。
多くの化学物質は MCS発症段階で毒物として作用する可能性が高い。
建物の汚染物質(新 たな物質;ナノ粒子)
自動車の汚染物質 (霧状粒子物質)
プラスチック素材か らの揮発物
溶剤
香水
化粧品
洗濯洗剤粉
煙(タバコ・煙突)
吸入抗原(花粉)
食物
薬
MCSは以下の状況 後で発症する可能性がある
A,急激な化学物質 曝露(多量惹起)
B,低濃度・低用量 の化学物質、薬、香料の長期に及ぶ曝露(少量惹起)
2、主流医学界での 見解は?
MCS患者―化学物 質や汚染物質を恐れる人
医師の中には、「そ のとおり。MCSという病気自体は存在する。しかしあなたは罹患していはいない。あなたの症状は精神病的なものです。」
3、機能性医療モデ ル
機能性医療において は、病気に焦点を当てる医療から、患者に焦点をあてる医療へ移行することを意味する。
ウィリアム・オス ラー氏の言葉
「より重要なのは患 者のタイプであって、病気のタイプではない。
今の病気を発症する 前の患者の健康と生活スタイルがどのようなものであったかの解明に努めなさい。」
4、ランドルフの環 境ストレスに対する特異的適応症候群(SAS)
「ストレス」という 専門用語は、1930年代において、内分泌学者ハンス・セリエが登場する前に精神分析医たちによって使用されていた。
後にセリエはこの用 語の意味を拡大して、あらゆる負担に対する身体的反応を含んだ概念を定着させる。
セリエの用語使用法 では、「ストレス」は状態を指し、「ストレッサー」とはストレスを引き起こす体内の反応を指す。
ストレスは穏やかな 炎症から本格的な体調の悪化につながるような深刻な症状までの、広い範囲の現象を網羅している。
ストレスの兆候は (化学物質による体内反応を含めて)、思考的、感情的、身体的、行動的なものとして現れる。症状としては、判断力の低下、全般的な悲観的ものの見方、過度 の不安、気持ちの落ち込み、短気、動揺、リラックスができない、疎外感・孤立感、鬱、漫然とした痛みや特定部位の痛み、下痢または便秘、吐き気、めまい、 胸の痛み、頻脈性不整脈、過食または小食、過眠症または不眠症、ひきこもり、もたつき、または無反応、リラックスの手段としてアルコールやタバコ、薬を使 用する、神経症的癖(爪を噛む、歩き回る)。
スタイルは、ラット やそのほかの動物たちを、不快または有害な刺激に曝した結果、順応には3段階があることを発見した。
1、警告期 2、抵抗期 3、疲弊期
さまざまなストレッ サーに対していつも同じストレス反応パターン(視床下部下垂体中枢(HPA)の活性化、糖質コルチコイドの分泌)が存在し、セリエはこうした反応パターン を汎適応症候群と呼んだ。
化学物質や食物、身 体的ストレスなどに一見適応しているように見える段階(第二期)後、患者は疲弊期に入る。疲弊期とは、身体における生物化学的システムの破綻を意味する。 スタイルの実験では、(寒さというストレッサーに曝された)ラットは副腎機能の低下によって死ぬ。第3段階においては副腎は完全に機能不全に陥る。
ハンス・セリエの汎 適応症候群に類似するものとして環境医学の医師セロン・ランドルフ教授は特異的適応症候群(SAS)という理論を発展させてきた。
彼は化学物質過敏症 の患者各々が、化学物質に曝露しつつも症状が現れず、長期にわたって(実際はそうでなくても!)一見適応の段階(第二段階の抵抗期)にあることを発見し た。やがて最終的な第三段階(疲弊期)において、患者は多種類化学物質過敏症のような重篤な急性あるいは慢性反応を引き起こすようになった。
5、原因;引き金と なる事象、引き金および仲介因子
(体と脳におけ る炎症)
化学物質過敏症の原 因となりうるものに関して、「機能性医療」という本の中で引き金となる事象、引き金および仲介因子について議論している。
①引き金となる事象
アメーバ(寄生虫) 感染後の関節炎は引き金となる事象と呼べる。
多種類化学物質過敏 症患者にとって、化学物質の過度の曝露(溶剤・塗料、殺虫剤、抗生物質、重金属など)は、引き金となる事象となりうる。
②引き金
寄生虫、病原体のバ クテリア・酵母・カビ、食物抗原や体内に取り込んだ毒物は、慢性大腸炎や消化不良のような炎症の継続的な引き金として作用しうる。こうした引き金は診断の 上取り除かねばならない。
多種類化学物質過敏 症患者においては、引き金は溶剤やプラスチック素材、香水、医薬品や食物、食物添加物といったように多岐にわたる。
こうした引き金は診 断の上取り除かなければならない。
③仲介因子
仲介因子は、病気の 発現をもたらす媒介因子/代謝産物であす。引き金のように、仲介因子それ自体は病気の原因とはならない。仲介因子は形状や物質が様々で、(サイトカインや プロスタノイドと言った)生化学的なものあれば、(水素イオンのように)イオン的なもの、(病気の状態の継続といった)社会的なもの、(不安のような)心 理的なもの、あるいは病の本質についての信念のような)文化的なものが考えられる。
病気の一般的な媒介 因子にはホルモン(副腎機能低下、メラトニンやプロゲステロンのバランス異常など)や活性酸素、痛みや喪失に対する恐怖、自尊心の低下、学習性無力感、適 切な健康情報がないことも含む。
あらゆる媒介因子に 共通する特筆すべき特徴としては、疾患特異性がないことがあげられる。
6、生化学的個別性
MCS患者はそれぞ れが、体や脳を攻撃する慢性的炎症につながるような引き金となる事象、引き金、媒介因子を経験した生化学的な個体である。
いったん活性化され ると、慢性的炎症が(血液脳関門;BBBと言われる)脳内のグリア細胞の免疫活性につながる。グリア細胞は胃腸の免疫細胞と連携しているので、慢性的消化 不良が、気分や行動障害、てんかん発作、偏頭痛、多動症、鬱といった形で脳内においても生じていると考えられる。
胃腸と消化システム における炎症の原因は薬、化学物質、溶剤、重金属、感染症、それに隠れた食物アレルギーが考えられる。
最近の動物実験で は、過敏性腸症候群ンの患者から採取された組織にあるマスト細胞から放出された媒介因子はラットの内臓痛覚ニューロン(痛みを引き起こすニューロン)の炎 症を助長させるということがわかった。つまり、炎症性の媒介因子は神経システムに影響を及ぼすということである。また、視床下部下垂体中枢(HPA)と胃 腸免疫システムには関連性がある。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と糖質コルチコイドの量が慢性的に高いレベルにある慢性的ストレスは、炎症促進作用の あるサイトカインの一種、インターロイキン6(IL6)とインターロイキン8(IL8)を放出させる原因となる。
化学物質は体と脳双 方における炎症過程を上方制御する作用があるため、MCS患者に対しては炎症元となる体と脳双方を分析する必要がある。
こうした知見にもと づき、MCS患者診断においては、患者の体で慢性的炎症過程―毒物や生物学的引き金や媒介因子によってもたらされる持続的炎症―にまで移行しているかを診 断調査しなければならない。
7、MCS患者用に 推奨される診断プログラム
7.1 代謝と栄養 状態(有機酸分析データ)、毒物など
生化学研究において 過去数年で最も盛んな分野は、生化学的疾病の媒介因子の特定と個別化である。毒物学テストを含む一般的な医療分析に加えて、新たな尿テスト―有機酸分析 (オルガニクス分析データ)- がMCS患者にとっての引き金や媒介因子を突き止めるのに役立つ。
独自に編み出した包 括的オルガニクステスト(特許出願中)は体の細胞代謝の過程と代謝機能の効率性に焦点をあてる。栄養学的治療が可能な解毒の際の代謝障害や問題、腸内毒素 症、酸化ストレスを特定することで、患者個人に合わせた介入治療が可能となる。
焦点を絞った治療に よって、患者の反応を最大限に高めることで、より効果的な結果が得られるようになる。
MCS患者は、エネ ルギー生産欠乏(ATP;アデノシン三リン酸)をもたらすミトコンドリア障害の兆候を示すことが多い。体は解毒のためにエネルギーの8割を必要とするた め、ミトコンドリア障害は解毒機能の低下と直接的に結び付くことになる。グルタチオンやアルファリポ酸、コエンザイムQ10(ユビキノン)といった物質 は、ミトコンドリアの働きを助けることで、エネルギーレベルを上げて解毒能力を高める。
7.2 重金属毒 性
元素には細胞に蓄積 し毒性効果をもたらすものもある。重金属毒性は環境が健康に及ぼす深刻な懸念である。鉛やカドミウム、水銀、ヒ素などの毒性負荷は、とりわけ子供の脳や神 経システムに深刻なダメージを与える可能性がある。毒性成分は様々なメカニズムによって多くの悪影響をもたらす。